外出制限の日常〜3 11日目 34歳 レストラン店主 サラ=ルーさんの場合

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*サラ=ルーさん自宅からの眺め
ご本人の了解を得て、Instagramから拝借。




2020年3月27日(金)

外出制限11日目をどう生きているか?

レストラン「ラ・オ」店主のサラ=ルーさんが

インタビューに応えてくださいました。

フランス全土のレストラン休業を

政府が宣告したのは3月14日(土)夜のこと。

ランチがメインの小さな店の経営者は、政府の対策をどう捉えているのでしょう?








名前:サラ=ルー・ジェルヴェ氏 (女性)

年齢:34歳

職業:レストラン「La Haut」店主

家族:夫、娘(2歳半)、息子(4ヶ月) *3人家族、3人暮らし

住まい:フランス国立図書館に近いタワーマンション
34階建ての22階 68㎡
*3月14日(土)からは、ロワール地方トゥーレーヌの実家(庭のある一軒家)で生活中。






ー現在はパリのアパートではなく、ご実家で暮らしているのですね?

はい、もともと週末はいつも、私の実家へ家族みんなで移動して
庭のある一軒家で過ごしています。
ですので、政府のレストラン休業宣言を聞いてすぐに
実家にとどまることを決めました。
ちょうど両親は留守にしていますから、
私たち家族4人にとっては好都合です。
外出制限中に庭があるのは助かります。
子供達が小さいので、特に。

パリのアパートは、医療関係者や保育士(*主に医療関係者など
現在働いている人たちの子供のために)に使ってもらおうと思って
専用ページに登録しました。
今のところ利用者はいませんが・・・
困っている時はお互い様ですよね。
今いる場所、つまり私の実家の近所でも
お年寄りのために買い物を分担するなどの
お手伝いコミュニティーが出来上がっています。
なかなかいい動きで、役に立っているのですよ。





ーレストランによっては、一時的にテイクアウトに切り替えて
その場をしのごうとしたところもありましたが。

私は躊躇せず、すぐに休業しました。
自分の店を、政府が言う「必要最低限」とは思いませんでしたし、
野菜と果物の業者さん意外、全ての業者さんが休業してしまったので
続けることができませんでしたし。

それに実は、私の店の料理人は台湾人で、
彼が今年の1月からずっと
「大変なことになると思う、用心しないと」と言っていたのです。
フランスにはマスクもないし、予防の習慣も準備もない、
きっと大変なことになる、と。
その頃、フランス人はまだことの重大さに気づいていませんでしたが
彼が正しかったということですね。

テイクアウトに関しては、私の店では休業宣言の3週間ほど前から
テイクアウトのみに切り替えていました。
その時に、政府から接客面の衛生管理が強化されて、
安全対策にベストを尽くす意味でそうしました。
店のそばにピティエ=サルペトリエール病院*があって
常連さんには医師や看護師も多いのです。
(*コロナウイルス関連のニュースでは
この病院の感染学者の意見が求められることが多い)
彼らから内情がいかに厳しくなっているかも聞いていましたし、
私たちもレストランとして、
できる限りのことをしたかったので。

3月17日から始まった外出制限も、必要なことだと思っています。
もちろんこんな経験は、しないに越したことはありません。
でも、外出制限が必要な状況なのであれば、
必要な期間だけ、無理に短くせずに、実行するべきだと思います。





ーとはいえ、経営者としての困難も想像されます。
レストランに対する政府の補償はどうでしょう?

政府からは、大きな支援を得ていると感じますよ。
まず全てのレストランや商店が、
今回一律に1500ユーロ(約18万円)を受け取ることになっています。
次に、従業員の給与に関しては、一時失業給付金(失業手当)が適用されます。
一旦雇用主が従業員に支払いをして、後で戻ってくるかたちです。
私の店にも3人従業員がいるので、彼らの月給を心配をせずに済むのは
本当にありがたいですね。
それから、銀行への返済も、6ヶ月先送りできることになりました。
こういったもろもろの努力を、私は高く評価しています。
でも長引くと困りますね、
1500ユーロを毎月もらえるわけではないですし、
一時失業給付金も、来月はどうなるのかわかりませんから。







ー外出制限から11日、どんな生活ですか?

慣れるまではちょっと大変な時もありましたが・・・
ちょうどそういう年齢なのだと思いますが、
娘がとてもいらだってしまった時があって。
それに息子はまだ生後4ヶ月、夜中に起きなくてはなりませんし・・・
でも今は大丈夫です。

仕事は毎日していますよ、
夫が午前中に仕事をして、私は午後に仕事をし、
子供の面倒をかわりばんこに、
つまり私が午前中、彼が午後にみています。

彼は建築家、私と同じ自営業です。
建築家も、他の業種と同じように仕事がストップしてしまっています。
というのも、彼が手がけている工事現場は今、
全て中断しているのです
今は書類を作成したり、メールに応えたり、
家でできる仕事をしています。

私も、店の事務仕事をしています。
今回の対応の手続きもありますし、会計士や銀行へ送る書類を整えたり。
仕事をする時間そのものは、彼も私も減りました。
1日のほとんどの時間を、子供達のために使っている感じです。
うちの子達は2人ともまだ、1人遊びができる年齢ではないので。

それから、料理もするようになりましたね。
普段は1日に8時間も店で料理をしていますから、
家では何も作りたくなくて(笑)
食べるものはいつもシンプル、
素材そのもの、という感じだったのです。
今は、娘のためにお菓子を焼いたりしていますよ。







ー今の生活は辛いですか?


そうですね・・・
私たちはいい環境にあると思います。
庭もあるし、両親も親戚も、誰も病気になっていません。
心配がないというのは、ありがたいことですよね。

時々、仕事の先行きを考えて、悩むことはあります。
でも今すぐに困っていることはありません。
私の店は恵まれていて、年末のストの影響も
ほとんど受けずにすみました。
ですから今回のダメージの後も、まだ続けられます。

今回の休業については、夏のバカンスを取らないことで
埋め合わせよう、と考えているところです。
8月にとる4週間のバカンスを、
この3月にとった、とする。
こう対応するのがベストだと。





ー運動不足の心配は有りませんか?

時々庭に出ますから、運動不足は感じません。
夫ですか?
夫も庭に出れば十分みたいですよ(笑)
日曜大工をたくさんしてくれます!







ー外出制限のおかげで発見した、ポジティブなことはありますか?

ポジティブなこと・・・
私たち夫婦は二人とも、育児休暇を取らなかったのですが、
今、こうして子供達と一緒に過ごすことができています。
4ヶ月の息子は、休業宣言直前の1週間託児所に行っただけで、
それ以前はいつも私が店に連れて行っていました。
レストランに小さな子供がいるというのは、
仕事をする私も大変でしたが、
息子にとってもきつかったと思います。
今はこうして、夫も私も、
仕事をしながらではなくて、つきっきりで子供達と時間を過ごしています。
人生には仕事だけじゃない。
つくづくそう感じています。







ーでは、この外出制限が解けた暁には、何をしたいですか?

仕事をしたいです!(笑)
自分の仕事が好きだということもありますが、
20㎡の小さな店ですから、従業員もお客さんも、
みんなが大切な1人1人なのです。
彼らにまた会って、近況を報告し合うことは
喜びであると同時に、必要なことだと感じます。

それから、友達と連れ立ってレストランにいきたいですね!
その時は娘たちをおじいちゃんおばあちゃんに預けます!
夫の両親も、私の両親も、孫たちとの再会を
本当に心待ちにしていますから。
(*フランスでは3月12日のマクロン大統領の宣言以降
高齢者と子供の接触が禁止されています)








メルシー、サラ=ルーさん!

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©Sarah-Lou

「こんばんは家族を日本に連れて行きました!
ありあわせのもので・・・」

と、サラ=ルーさんから夕飯の写真が届きました!








マクロン大統領も、フィリップ首相も

口をそろえてこう言います。

「外出制限が終わったその時に、

みなさんがまた職場復帰できるためにも

これまで順調だった企業や飲食店を

倒産させるわけにはいかない」




政府からの補償は、今を乗り越えるため、

そして乗り越えた先にV字回復するために、不可欠。

大変ロジックです。










サラ=ルーさんのInstagram ↓






サラ=ルーさんのレストラン「ラ・オ」FB  ↓




こんなお店です! ↓












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by keikosuminoleb | 2020-03-28 03:44 | パリのニュース 街と人 | Comments(0)

パリ在住26年ライター&コーディネーター角野恵子目線のパリ情報です。Keiko SUMINO-LEBLANC, journaliste japonaise, FOOD et Life Style.


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