河瀬直美監督がスーパーバイズ ユネスコ奈良・映画製作ワークショップがスタート

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2020年2月13日

パリのユネスコ本部にて、

UNESCO/Nara residency for young African female filmmakers

プロジェクトの記者発表会。



アフリカの若き女性映画監督に、

国境を超えて、活躍の場を提供するこのプロジェクトは、

ユネスコ事務局長のオードレ・アズレさん(写真左から2人目)と

映画監督の河瀬直美さん(写真右)のイニシアチブで実現。











参加資格は、アフリカに住む21〜35歳の女性映画監督

に限られますが、

総勢約600名の応募があったとのこと。



600名の中から、選出されるのはわずか10名。



受賞者10名は、今年3月28日から4月12日までの2週間

奈良市田原地区に滞在

河瀬直美監督作品「の森」の舞台となった田原地区にて

映像を作成。

河瀬監督は若きクリエーターに寄り添い

適切なアドバイスをしてゆく・・・


完成した作品は、なら国際映画祭 にて上映されます。 
*2020年9月18〜22日 「Grand Voyage with Africa」




という、夢のような機会が提供されるプロジェクト。

資金面はUNESCO日本信託基金と

国際交流基金が協力。







受賞した10名の名前を読み上げる

アズレさんと河瀬監督。

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会場から大きな歓声が沸き、微笑みを漏らす河瀬監督。


南アフリカ、ブルキナファソ、ケニア、

ナイジェリア、セネガルの5カ国から

各2名の女性監督が選出されました。






アフリカ映画から感じるのは

仏教が入ってくる前の日本に存在した信仰です。

アニミズムに、日本人とアフリカ人の共通点がある、

と感じます」


と、河瀬監督。





今回のワークショップで

奈良県田原地区に滞在するアフリカ人女性監督たちが

何を感じるのか、

それをどんな映像で残してくれるのか、

とても楽しみだと話していました。






「田原地区にある森は、私にとっては子供の頃からの遊び場。

そこに入ると "守られている" 感じがしたものです。

しかし自然は同時に、災害をもたらす脅威でもある。

守ってくれもし、また脅威でもある自然に対し、

日本人は敬意を抱き、

神として信仰してきました。」



その場所に、アフリカからの10名がやってくるわけです。

河瀬監督同様に、私たちもワクワクしますね。





また、

今回のプロジェクトが、女性だけを対象としていることにも

意義があるという点も、強調されていました。




「わたし自身が女性映画監督として、いばらの道を歩んできました。

アフリカの女性監督たちも、厳しい環境下で活動し、

その中で自国について掘り下げていると思います。

そんな彼女たちが国境を超えて、

出会えなかった場所、出会えなかった人に出会う。

このプロジェクトは、出会いを平等に享受できる機会です」



「どんな人たちがやってくるのか、どんな文化的背景を持つのか、

全く予想できません。

でも1人1人が、大切なものを持ち寄って出会うわけですから

そこには必ず発見があります。

人生を変える何かが始まる、そう確信しています。」




その発見、人生を変える何かを得ることは、

10名の参加者だけでなく、河瀬監督自身にとっても同じだと。




などなど、記者発表会に続き、

会場を移動して行われた質疑応答でも、興味深いお話を聞くことができました。






もう1つ、絶対に書き漏らしてはいけないこと!

それは、2005年、ユネスコで採択された

文化多様性条約 に、日本が批准していないという事実です。

146カ国が批准しているこの条約に対し、蚊帳の外を選んでいる日本・・・




「私はことあるごとに、日本も参加するよう

政府に訴えかけていますが、未だかないません。

今回のワークショップをきっかけに、

日本も文化多様性条約 に加わって欲しいという

願いもあります。」




河瀬監督によると、この条約の批准国となることで

日仏合作映画が作れるようになるのだそう。



なんで日本は加わらないんだろう?

と思い、ウイキペディアをみたところ、アメリカも批准していませんでした。

え? まさか、そういうこと?

インターナショナルな舞台で勝負する韓国は、もちろん批准しています。

オスカー4冠、取りましたね、韓国のポン・ジュノ監督。


*2020年2月20日追記
文化多様性条約と日本の立場について、
パリ日本文化会館秘書氏から情報が届きました。
独立行政法人経済産業研究所の記事→ RIETI
偽装された保護主義か、文化多様性の促進か?
決して、アメリカに目配りしての
蚊帳の外ではなかったわけです。
誤ったジャッジと偏見、反省いたします。




日本で触れられるアフリカ情報:

「シネマアフリカ」

https://www.facebook.com/cinemaafrica


「UNHCR 難民映画祭

https://www.unhcr.org/jp/refugee-film-festival




***



↓ 受賞者の一人、ブルキナファソの
デルフィーヌ・イェルバンガさんが、スクリーンに。
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↓ こちらは、奈良県、田原地区の森の映像。

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ユネスコ事務局長のオードレ・アズレさん(左)と

河瀬直美さん(右)。
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会場を移して、質疑応答。

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今回、取材の機会を得て初めて
「そういえば、アフリカ映画って知らないな」
と、気づいた私。 かろうじて、
アフリカ文学なら少し触れたことがありますが
映画は全くナシです。  文学以外には、
ワックスと呼ばれるアフリカ流のモードや
オクラの煮込み料理や・・・大変貧しい知識。

こういう人(私のような人)、案外多いと思うのですが
みなさま、いかがでしょう?  私のような人が、
知っているようで実は全然知らなかった
アフリカという国に興味を持つ、
いい機会でもあると思いました。

ふと気づけば、女性もアフリカも、
メインストリームではない点で共通しています。
意識的に注目する必要、大アリです!


とはいえ、ちょっと検索すれば
アフリカには著名な映画監督が大勢いるし、
ベネチア映画祭等の受賞監督もいました。
単なる私の勉強不足かもしれません。
みなさまは、いかがですか?
アフリカ映画、アフリカ文化、
折々で触れられていますか?


***

今年に入り、「女性を応援しよう」と思った私。

気づいた、という方が正しいかもしれません。

これまで、取材対象の多くが男性でした。

意識せずに、そうなっていたのですが

これからは意識的に、女性を取材したいと思います。

世の中には才能ある女性が大勢

活躍していますから!

河瀬直美監督のように!!

(しかも、河瀬監督はご自身の活躍に加えさらに、
若手を育てるべく尽力もしている。
さすがです)









以下、おまけとして ↓ 河瀬監督の美しい立ち姿。

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お顔がぶれてしまったので。。。体のシルエットだけ掲載。








記者発表会が行われた、第二会議場。

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通訳ブースには女性の姿が目立ちました。




河瀬直美監督(左)
ユネスコのToussaint tiendrebeogoさん(中央)
パリ日本文化会館長の杉浦勉さん(左)

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トゥーサンさんはブルキナファソご出身、
杉浦さんはパリに不妊する前、
ブルキナファソに駐在していたとのことで、
お二人は周知の間柄なのだそうです。








第二会議場、モダニズム建築!
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UNESCO/Nara Residency



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第二会議場入り口のアート
アントニ・タピエス作 ↓

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そのお隣には、ピカソ。サインなし!

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なぜサインがないのか?

こちら 👉 こちら! ご覧ください・笑





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「Grand Voyage with Africa」ワークショップの

成功をお祈りいたします!





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by keikosuminoleb | 2020-02-14 06:29 | パリのニュース 街と人 | Comments(0)

パリ在住26年ライター&コーディネーター角野恵子目線のパリ情報です。Keiko SUMINO-LEBLANC, journaliste japonaise, FOOD et Life Style.


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