【2020年2月16日追記】パリ産日本酒『AYAM』の記事がドリンクプラネットにアップされました 👉 こちら!
2019年11月
パリ生まれの日本酒が、ついに発売されました。
生みの親は、ディスティルリー・ド・パリ の
ニコラ・ジュレスさん。
ディスティルリー・ド・パリ、ご存知の方もいらっしゃると思います。
史上初、2013年に誕生した、パリ唯一の蒸留所で
香水のように洗練されたジン、パリ産のジンを作る、
それが、ディスティルリー・ド・パリ。
ディスティルリー・ド・パリのジンは、日本の伊勢丹でも
取り扱いがあります。
そのディスティルリー・ド・パリを起業した男
ニコラ・ジュレスさんが、
今度は日本酒を作りました!
その名も
AYAM アヤム
インドネシアの漆黒の鶏から
名前をとったとのこと。
この史上初、パリ産日本酒を、
2019年11月に試飲させてもらいました。
そして1本、いただいて帰ってきたのですが
開けるタイミングを待ち、
待ちすぎて、今日になってしまった・・・
(何人か誘って、他のフランス産日本酒も数本用意して
試飲したかったのです)
でも、ニコラさんは、せっかくいち早く
私に教えてくれたのです!
冷蔵庫にとっておいてはいけない!!
と思い、開栓!!!
75;パリを示す県番号。
13;許可がおり蒸留機が届いた年(2013年)。
01;パリ蒸留機1号の意味。
ディスティルリー・ド・パリのジン、ラム、ウオッカ、
メープルシロップスピリッツは、すべて
この瓶で販売。
日本酒も、今現在はこの瓶ですが、
2020年2月には専用の瓶に変わるそうです。
アルコール度数は15,5%。
一般的な日本の日本酒と同じ、ですが
パリで流通しているものは15度以下も多数。
ゆえに、アルコールしっかり高めの印象。
『AYAM SPIRITにより
パリで発酵・製造
85 rue du faubourg Saint Denis
75010 Pairs ←住所
パリで瓶詰め』
栓を開けると・・・
パッと立ち上るフレッシュ感!
色は、お気付きの通り柔らかな黄色をしています。
無濾過なので、透明ではありません。
この優しい色合いが、まず
いわゆる日本の日本酒とは違う。
ニコラさん、私に「日本酒を作るよ」と教えてくれた時から
「日本の日本酒とは
全く違うものを作ります」
と、話していました。
「日本酒を飲むようになって、もう20年以上になります。
僕は本当に、日本酒が大好きなんです。
うちのエピスリーでも
20年前から日本酒を販売しています。
(注:ニコラさんは食材店も経営)
ディスティルリー・ド・パリを始めてからは
ちょくちょく日本へ行くようになって、
特別な日本酒を味わわせてもらう幸運も増えました。
そうやって日本酒を知れば知るほど、
好きになればなるほど、
パリで日本酒を作るなんて気持ちにはならなかった。
一度、個人的な研究として作ったことはあり、
いいものができはしましたが、
商品化したいとは思いませんでした。
日本の伝統や、杜氏の仕事に心から敬意を示す者として、
なんでパリでそのモノマネをする必要があるの、と
意味を見出せなかったんです。
でもその後、いろんな出会いがあって
いろんな人の話を聞くうちに
ワインの国の、フランス人の自分にしか作れない
日本酒を作ろう、と思うようになり」
アヤムが誕生したのでした!
開栓の瞬間に感じたフレッシュな香りは、
グラスに注ぐと全然違った印象に変化。
上質なハムのような?
藁のような??
ひなびた香り、懐かしい田舎の匂い。
香り高い吟醸酒とも、
アルコールが染み渡る昔ながらの清酒とも、
どちらとも違う。
生酛系に近い残り香はあるような。
口に含むと、まず新鮮な酸味、
さらっとしたテクスチャーを感じたと思ったら
すぐにひなびた香りがそのまま味わいになって現れて、
洗練とは違う不思議なクセが、クセになる・・・?
日本の、水のようにきれいな純米大吟醸とは
全然違います。
からといって、生酛、山廃とも、
清酒とも違う。
なんだこれは!?
以前、ブルゴーニュの日本酒
Kura を飲んだ時に
「日本酒と思うとがっかりするけど、そうでなく、
『テーブルにおいて料理と楽しむお酒』と思うなら
これはこれでいけるのでは?」
と思ったことがあります。
ニコラさんのアヤムは、味と香りの個性が
いかん、全然書けない、と思い、開栓から2時間後くらいに
もういっぺん飲むことにしました。
そしたら、味わいが変化しています。
藁よりも、乳酸菌を感じる。
「日本酒に関する文献を読んでゆくと
"水のバイブレーション"とか、
"水の共鳴"といった表現に、頻繁に遭遇します。
日本の日本酒が極限まで水に近い純粋さを追求したものなら
僕はそれとは違うものを求めようと思いました。
原料の米の味わいがある日本酒です。
ワインの国の、フランス人の僕にしか作れない日本酒として、
まず、ワインを作る時にぶどうの皮をむかないように、
僕の日本酒も、米を磨きません。玄米のまま使います。
考えてみれば、ウイスキーやジンを作る時、
原料の雑穀は全粒のまま使います。僕の日本酒は、
原料の味を忠実に出すことを目指しつつ醸造しています」
↓ こちらが、今年2月に登場するAYAM専用ボトル。
ラベルは、なんとニコラ・ジュレスさん
ご自身によるイラスト!
鶏はフランスのシンボル、
その鶏の、真っ黒なのが、インドネシアのAYAM。
鶏だけど、普通の鶏とは全然違う。
日本酒だけど、日本酒とは全然違う。
そんな意味が込められているそうです。
現在のところ取り扱いショップは、パリ10区のディスティルリー・ド・パリのみ。
ディスティルリーでは、香水も作っています。これももちろん、パリ産!
右側の壁には、ジン、ウオッカ、ラム、
メープルシロップ・スピリッツ、
そして日本酒アヤム!
500ml 19,90ユーロ。
750ml瓶は、22,50ユーロで販売予定。
史上初のパリ産日本酒AYAMは
カマルグ産の短粒種米と、赤米を
磨かず、玄米のまま使い、
無濾過、生(火入れなし)。
製造過程で、AYAMの原酒を蒸留した蒸留酒を
アルコール添加しています。
「酒精強化することで、一般にデリケートとされる日本酒も
保存が効くようになりますし、
米の味わいを強調するという意図もあって
アルコール添加をしています。
無濾過なのも、米の味わいを残すためです」
ニコラさん曰く、フィノのようだと。
フィノやポルトー、シャラントのペルノーなど
酒精強化ワインと同じメソッドなのですよね、
日本でいう「アル添(アルコール添加)」は。
日本では、ちょっと前まで
とても悪いイメージで見られていたアル添。
ヨーロッパでは、酒精強化ワインは
全然悪いイメージではありません。
悪いものを足していないので。
ニコラさんのAYAMは、日本のルールでは
純米酒ではなく、清酒ですが、
原料は米と水、麹だけなので、まあ、純米、ですよね。
麹は、日本の麹と中国の麹(黄酒に使用する)を
自家製で培養。
麹を培養して4年になるそうで、
今では麹菌もとても安定しているそうです。
日本と中国、2種類の麹を使うのは、
その方が丈夫な麹ができるから。
まだまだ書きたいことはありますが、
今回はこの辺で!
フランス人が作るフランス流の日本酒は、
やっぱり、料理と楽しむことが前提で作られていました。
「ジュラ地方のワイン、ヴァンジョーンヌのイメージです」
とも、ニコラさん、お話していました。
ご注文は e-shopから →こちら!
*****
角野恵子の共著書、翻訳本、よろしければ手にとってご覧くださいませ。