
グルメ雑誌 septieme goût のジャーナリスト
ジャン・デュソソワさんのお誘いで
ビストロ・ヴォルネイへ。
2015年にオーナーが変わり、
店内もモダンに様変わりしてからは
私にとって初ランチとなりました。
・・・改装以前、レジスタンスのままか?! と思うような古めかしい店内が好きでした。メニューにはブッフブルギニョンなどの伝統料理が揃っていて、しかもなかなか品のいいお味で。つまらないリニューアルばかりするオペラ座エリアの店には珍しい
落ち着きあるいい店でした。当然、私はビストロ・ヴォルネイのリニューアルを歓迎しなかったわけですが・・・
この日、生まれ変わったビストロ・ヴォルネイを初体験して
新しい魅力を発見!
なんと、元ルカ・カールトン(三ツ星)のシェフ・ソムリエ、
フィリップ・マルクさんが独立し、
ここのオーナーになっていたのです〜〜〜〜!!
(今まで知らず・・・すみません)

メニューは、季節の食材に合わせてほぼ毎月変わるとのこと。
ランチは2皿のコースが35ユーロ前菜・主菜・デザートが40ユーロ。
私たちは、料理とワイン、&コショウのペアリングコースを。

そう、ビストロ・ヴォルネイのペアリングは料理とワイン、だけでなく、なんとコショウを合わせるのです!!
それはなぜか?!
ランチを進めながら、理由を発見して行きましょう。
1皿目うなぎのスモーク、ビーツいろいろ、アンドゥイユ。ヨーグルトと西洋ワサビのソース。

*すべて通常の量より、少なくしてもらいました。
スモークうなぎもアンドゥイユ(燻製ソーセージ)もかなり癖のある食材。
合わせるワインはスペインの酒精強化ワインシェリー酒の、マンザニラ・ミカエラ。Manzanilla Fina Micaela Bodeaga Baron
そしてマダガスカル産の野生黒胡椒Voatsiperifery。

これをコショウ挽きでカリカリっと挽いて料理にかけます。まずは胡椒なしで食べてワインを味わい、次に胡椒ありで料理を食べて、またワインを一口。
そうすると、確かにワインの印象がガラリと変わる!
胡椒が、料理とワインをつなぐ、そんな印象・・・
甘いシェリー酒を前菜に合わせるなんて
チャレンジングですよね。でも、こういうこってり感あるワインでないとスモークうなぎとアンデュイユを受け止めることはできないかも知れません。そしてシェリー酒の甘味を、野生胡椒の香りが程よく中和。
2皿目温泉卵のきのこソース、野生きのこのソテーとセルフイユ。

合わせるのは2017年のリュイイRuilly 2017 Domaine Chartronとマダガスカル産黒胡椒

「卵とワインは、ペアリングが難しい」が定説。その二つを、不思議なことに胡椒が繋ぐわけです。
3皿目白身魚とマテ貝のポワレやさしいカレー風味
カレー風味のフレンチもワインを選びますよね。

合わせるのはMercurey Chapitre 2017Vincent et Jean-Pierre Charton マレーシア、サラワク産黒胡椒
海の幸に赤ワイン?!!
でもご安心を、サラワク産黒胡椒がピタリとつないでくれますから!
嘘だと思うでしょう?
ぜひ試してみてください、
こんなに説得力あるペアリングだとは私も思っていませんでした。
それをここで言葉で説明できれば一番なのですが、悲しいかな、メモが見つからず・・・涙
4皿目鹿フィレ肉のステーキ、フランヴヌールソースキャベツの蒸し煮。

合わせるのはCahors "La Fage" 2015, Domaine Cosse et Maisonneuve
カンボジア、カンポット産白胡椒

鹿もですが、このキャベツが非常に心に残っています!こういう脇役を丁寧に調理するシェフ、好きです。
カオールは例によってどっしりなのですがこれは意外にもエレガントさがあり、さらりとミネラルな鹿さんを邪魔せず。感じよく寄り添っていました❤️よいな〜、フランス文化!
5皿目デザート、サマナ産チョコレートのクラン(とろ〜りケーキ)赤長胡椒とピーカンナッツのアイスクリーム
Dom PX 19987 Bodega Toro Albala
カンボジア産 赤長胡椒

とろりとしたドン・ペーエキスと
濃厚なチョコレートのデザート。
デザートって、
言葉が悪いことを承知で言うと「女子供の食べ物じゃない」ってつくづく思います。おっさんのためのものだと。
ソムリエ・オーナーの
フィリップ・マルクさん!

ルカ・カールトン時代、
かの名シェフ、アラン・サンドランス氏の元で
10年務めたのだそう。
その時に、この
「ワインと料理を胡椒で繋ぐ」体験に目覚めたといいます。
「今でもはっきり覚えています。
サンドランス氏とペアリングを考えていた時、
『悪くないけど、ちょっとぎこちないな。胡椒を変えてみてくれるかい?』
と、サンドランス氏が言いました。
胡椒を変えてみたら、驚くほどにピタリと
料理とワインが合ったのです。
胡椒とワインには、私たちがまだ理解し尽くしていない
秘密が隠れている、そう確信した瞬間でした。
3人や4人でテーブルを囲む時、
肉を注文する人もいれば、魚を注文する人もいます。
みんなが同じワインを飲みたいとは限りません。
そんな時、グラスワインで対応することもできますが、
いいボトルを1本選び、
それをどの料理とも合わせられるように胡椒を使う。
今、ビストロ・ヴォルネイで提案していることです。」
だから、ペアリングに胡椒! だったのですね!!
使用する胡椒は、常時約40種類。

バックバーに、ずらり、この通り!
すべて Terre Exotique テール・エキゾティックのものです。
アールデコの内装が美しいビストロ・ボルネイ。元ルカ・カールトンのシェフ・ソムリエの店ですからワインリストの見事さは星付きレストランさながらでした。
「本当のいいワインを楽しむための店が、パリにはありません。
いいシェフの店に行かない限り
いいワインリストに出会えないのが現状です。
でも、ものすごく豪勢で立派な料理をいつも食べたいわけではないでしょう?
加えて残念なことに、
最近のワインバーは、ナチュラルワインばかりになりました。
せっかくワインの国フランスなのですから、
ワイン好きが満足できるワインに特化した店がなくては」
フィリップ・マルクさん、おっしゃる通りです。
ワイン好きなあの人を、連れて来たい!

オペラ座エリアなので、
使い勝手もいいですよ!

Bistro Volnay
8 rue Volney
75002 Paris
電話:01 42 61 06 65定休日:土・日曜
*5皿のコースメニューは68ユーロ、
ペアリングワインは44ユーロです。
【Terre Exotique(テールエグゾティック)】『スモーク・ヴァイキング・ソルト』
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角野恵子の共著書、翻訳本、よろしければ手にとってご覧くださいませ。