ライヨールナイフの生まれ故郷、ライヨール村の、フォルジュ・ド・ライヨールを見学

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2019年11月19日

フランスのど真ん中、オーブラック地方の

アヴェロン県ライヨール村へ。


ライヨールと聞いて、ナイフを思い出す方は多いと思います。

ライヨールはもはやナイフの代名詞。

特に、折りたたみ式ナイフで有名。




こんな感じの。
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こちら ↑ が、正真正銘、ライヨール村で作られた

ライヨールナイフ。

Fourge de Laguiole (フォルジュ・ド・ライヨール)

の刻印が、その証。





なぜそんなことをわざわざ言うかというと、

現在「ライヨール」と呼ばれているナイフの

ほぼ全てが、ライヨール村以外で製造されているから。

実は私、この時までそれを知らずにいました。





ライヨール村で初めてナイフが製造されたのは、

1829年のこと。

現在の形に近いものが作られたのは

1850年頃だそうです。


標高が高く雪深いライヨール村の自然は

農夫たちにとって過酷なもので、

村人の多くがピレネー山脈を超え

スペインへ出稼ぎをする習慣があったといいます。

彼らがスペインで見た使い勝手のいいナイフ。

それをライヨール村に戻って再現し、

現在のライヨールナイフが誕生しました。



しかし、2つの世界大戦を経、

ライヨール村の人口は激減。

ナイフ工房も村を下って、近隣の街へと移り・・・

ライヨール村からナイフ工房が消えてしまった。

ライヨールナイフの名は残ったものの

製造は、近隣の村で行わるようになりました。






「ライヨールナイフのふるさと、ライヨール村に、

ナイフ工房を復活させたい!」


そう願ったティエリー・コースト氏が

1987年、現在の本社兼工房を完成。

こうして生まれたフォルジュ・ド・ライヨール

製造の全ての工程をライヨールの地で行うほか、

原材料の鋼もフランス産にこだわっています。

工程を機械化せずに、

職人が手で作っていることも、ほかのメーカーとの大きな違い。

全ては、伝統の技術を保存し、後世に伝えるため

そうやって守っていかないと、なくなってしまいますからね。



ところで・・・

ティエリー・コースト、と聞いてピンときませんか?

・・・そうです!

ホテル・コースト、カフェ・マルリー他

パリのマストアドレスを牛耳るオーナー兄弟の一人。

なんとコースト兄弟は、ライヨール村のご出身なのだそうです!





と、説明が長くなりましたが、


このフォルジュ・ド・ライヨールの工場見学をするために

パリから飛行機に乗って

アヴェロン県、ライヨール村を訪れました。


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折りたたみナイフを模した
ユニークな形の本社兼工房は、
フランスが誇るデザナー、フィリップ・スタルク作。



入り口にはブティックになっています。

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スタルクさん、ナイフの刃は
店内まで貫通していたのですね!!



このブティック
営業時間内であれば、誰でも予約なしで立ち寄れます。




ブティックの向こうは、ガラス張りなっていて・・・


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職人さんが作業中。

熟練の手で作る、職人の仕事。
宮崎駿の世界を彷彿とさせますね・・・




ガラス張りの向こう側、アトリエに入って
見学させてもらいましょう!

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工芸ナイフ職人の、ステファン・ランボーさん。




イギリス、ポーランド、ドイツ、イタリア、日本からの
ジャーナリストに囲まれ、
今行っている作業の内容を説明。

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現在、フォルジュ・ド・ライヨールには

ステファンさんの他に、もう1名、

工芸ナイフ職人がいるのだそう。


彫金さながらの細工はもちろん、
ナイフの刃も、柄も、一から十まで
ステファンさん1人で完成させます。

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1人の職人が、1つのナイフにみっちり取り組んで、完成させる。
それが、工芸ナイフであり、
工芸ナイフ職人であるという。





ステファンさんの向かいのアトリエでは、

メンテナンス修理の職人さんが

作業をしていました。

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お客様から預かった大切なナイフを

一旦全部バラバラに分解し、

1つ1つのパーツを洗浄、丁寧に研磨・・・




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ライヨールナイフは留め金なしでも

開いた時にカチッと固定されますよね。

その秘密が、この工程のビスの具合にあるという。



刃と柄がまっすぐ直線であることも重要。

すべての工程が正確でなくては、

あのカチッと固定される塩梅は出ないと言います。

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各工程、細密なチェックとともに

進められていました。




そんな作業場に

スタルクデザインの肘掛け椅子。

かっこいい・・・


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さらに先に進み、本格的な工場見学へ。



トッカントッカン(ガチンガチン、かな?)と、

ものすごい騒音を出すこの機会。

これがフォルジュ・ド・ライヨールの
フォルジュたる所以、

フォルジュ=鍛冶場です!

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鉄は熱いうちに打て、ではないですが

鋼は打ち出すことで初めて

中に含まれた空気の粒を潰すことができ、

刃先を均一にすることができるのだそう。


この工程を省くと、いくら刃を研いでも

空気の粒が空洞=ギザギザを作ってしまって

切れ味が悪くなる・・・





打ち出した後の鋼。

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100%フランス産の鋼です。



他のメーカーはたいがい、スウェーデン産鋼を使用。







柄の方は、木、石、骨・・・

いろいろな素材があります。


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↑ どれも輪ゴムでペアになっていますよね?

木でも石でも骨でも、折りたたみ式ナイフの柄にするには
1つの塊を2つに分けなくてはなりません。
その2つに分けた左右の模様がピタリと合うようにするために、
こうしてペアにしておくのだそうです。
これ、神経を使いますよね!!




研磨の工程 ↓ は、刃も、柄も、それぞれ行っていました。

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手作業でヤスリかけ。

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女性の技術者もいます!


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組み立ての工程は流れ作業ではなく、

1人の技術者が全行程を担当し、完成させていました。

技術者のみなさん一人一人が、

自分のナイフを作っているというわけです。






刃を研ぐ工程は、最後の最後に。

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ここでも作業は、目で見て、何度も確認して。



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どんなに小さなナイフでも、

このようにして作られているわけです。




私の10年以上に及ぶパリ在住ライター人生の中で

これまでにルクルーゼの鍋工場や、

アクセサリークリエーターの作業場、

ショコラティエのアトリエなど、

いろいろと見学させてもらいました。


そして、見学後に思うことは、いつでも同じ。


「これ、全然高くないよ。

というか、全然安いです!!!」




そのくらい、面倒で丁寧な仕事のオンパレード。




ブティックに並ぶスタイリッシュなライヨールナイフを見て、

これらの工程を想像することは

たぶんないでしょう。

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でも実際は

人間が1つ1つ手をかけ、手間を惜しまずに作っているのでした。




デザイナーやシェフとのコラボナイフを

数多く世に送り出しているフォルジュ・ド・ライヨールには、

マニア垂涎のコレクションもあります。

こちらは、エッフェル塔の鉄で作ったナイフ!

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2009年のエッフェル塔修復の際に撤去された鉄を、

柄の部分に再利用しています。

「1889〜2009年」の保証書付き!

このほかにも、

モンサンミッシェルの砂を使ったナイフ、

エアバスのカーボン素材を再利用したナイフ等。






中でも私が感動したのは、こちら!

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トゥミューほか、パリのおしゃれなレストランで見る

バターナイフ、

なんと先ほどの工芸ナイフ職人、

ステファン・ランボーさんによる

デザインだったのです!

独り立ちする、スタイリッシュなバターナイフ。

用の美を具現化したこの名作が

名のあるデザイナーによるものではなく、

現場で日々仕事をする

職人さんの工夫によって生まれていたことに

心から感動しました。






ステファン・ランボーさんが作るナイフには

1点1点、必ずサインが施されています。

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とても控えめに、こんな風に ↑。






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ステファン・ランボーさんのような職人さんが

今も存在すること、

そして彼のような根っからの職人気質の人材に

活躍の場を提供し、励ます会社があることにも

心を打たれた工場見学でした。


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フォルジュ・ド・ライヨール。

これから「ライヨール」の名を冠したナイフを購入する際は

しっかりとこの刻印をチェックしたいと思います。


それが、伝統の技術を支援することに

つながるわけですから。




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フォルジュ・ド・ライヨールの歴史は、こちらを ↓ !!


本社兼工房前の景色です。



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オーブラックは、パリから飛行機で約1時間半。

かの有名な三ツ星レストラン「ミッシェル・ブラス」や

オーブラック自然公園などがある魅力的な土地。


でも、飛行機以外の交通手段を使うと大変不便な

アクセスの悪い場所でもあり・・・

だからこそ、観光の手垢のついていない

生のフランスの地方の魅力を

堪能できる場所でもあります。

次回は、そんなオーブラックの魅力をリポートいたします。

ぜひとも多くの方々にオーブラックに足を運んでいただき、

フォルジュ・ド・ライヨールを見学していただきたいのです!

見学は無料です!!



















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by keikosuminoleb | 2019-12-17 01:05 | デザイン/ DECO/ DIY | Comments(0)

パリ在住26年ライター&コーディネーター角野恵子目線のパリ情報です。Keiko SUMINO-LEBLANC, journaliste japonaise, FOOD et Life Style.


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