la maison du saké ラ・メゾン・デュ・サケのユーリン・リーさん
このところよくパリの日本酒事情について質問されます。
近い将来、フランス他海外の国々に日本酒の輸出ビジネスを計画中の方や、フランスで日本酒を広げる活動をしたいと考えている方、海外向け日本酒本を企画中の編集者さん・・・などなど。
パリで日本酒はどんなですか?と質問された時に、私の個人的な感想としていつも答えているのは
「パリでは日本酒はとても評価が高いです」
という意見。
2011年のサロン・スピリッツ (*こちら!)でもワイン評論家や美食評論家、ソムリエやシェフたちが本物の日本酒に出会い、絶賛する様子を目の当たりにしました。
フランス人は小さい頃から、例えばクリスマスのテーブルなどでご馳走を食べる時などに「これはどこそこの作り手のフォアグラで、他に比べてよりレアだ」とか「この生牡蠣はどこそこ産で、後味の甘みがすごい」など、語りに語る大人たちに囲まれて育っています。だから、味覚を分析し、美味しいものを評価する文化・習慣が各自の中にある。
「えー、そうかな?フランス人なんてろくに料理をしないじゃない」
とおっしゃる方もいると思いますが、これまで20年間フランスに暮らし、フランス人の中でやってきた私の感想は上のとおりです。シンプルに見える(特に美食に興味を持っていそうもない)高校生が初めて緑茶を口にして「なんだか芝生の中にいるみたいだね、どの紅茶とも全然違う不思議な味がする。でも悪くない、フレッシュで美味しい」というようなことを言うのです!
美味しいものを評価する(ことができる)フランス人たちの首都がパリですから、文化的好奇心の高い人が密集しているわけで、よって、選りすぐりの日本酒がパリで評価されないわけがない。日本酒の試飲イベント salon du saké サロン・デュ・サケも
毎回大盛況です!!
しかし!
「パリの日本酒人気は、メディアでの話。実際にビジネスとして成立するほどの支持があるのか、となると話は別です」
と、la maison du saké ラ・メゾン・デュ・サケのユーリン・リーさん。
日本酒ブームを本当の意味でフランスに根付かせるにはどうしたらいいのか?
それを真剣に考え続け、結果、ラ・メゾン・デュ・サケをオープンさせた彼。
というのも、たとえ盛大な試飲会を開催し、来場者たち全員が日本酒を絶賛したとしてもそれが実際の利益(販売)につながらなければ、将来的には各酒蔵の経営者さんも酒造組合の皆さんもパリ進出を諦めてしまいます。
膨大な予算、エネルギー、時間をかけて、パリ進出の努力をする面々、そんな彼らをサポートし、フランス市場への橋渡しをするユーリンさん。
「双方に利益が生まれなければ、続かない。日本酒のパリでの発展はありえない」
このシビアなフィロゾフィーから1 試飲イベント開催2 そこで紹介した日本酒の仕入れ・小売3 レストランでのサーヴ全てを満たしてくれるラ・メゾン・デュ・サケをオープンさせたと。
どうしたら、フランスで日本酒が売れるようになるのか?ずっと考えていると話ていました。そんな時に、日本でヒットしたボジョレーヌーボーの戦略に多くを学ぶそうです。
また、ラ・メゾン・デュ・サケは昨年末、地下にヨーロッパ最大(?!)のウイスキーバーをオープンしたのですが、それも
「ウイスキーブームは絶大なので、宣伝の必要がありません。世界中から来店するウイスキーファンの皆さんが、ここで日本酒に出会う、そんな思いでウイスキーバーを作りました」
ユーリンさんと話をしていると、本当に応援したいと心から思います。
また、彼がフランス人のお客様にする日本酒の説明も、彼独自のアプローチで面白い!例えば、日本酒のタイプを「甘口、辛口」で区別せず「サケ・モダン、サケ・トラディション」と区別します。モダンの方はワイングラスで飲んだほうが美味しく、トラディションの方はお猪口。その理由は・・・
と、話はつきませんが、このくらいで。
パリで日本酒を買える場所は、la maison du saké ラ・メゾン・デュ・サケの他に
パリ一番古い日本食材スーパー 京子食品有名シェフ御用達の日本食材セレクトショップ workshop issé
など。パリ13区チャイナタウンの中国スーパーにもかなりレアな銘柄が置いてあってびっくりしました。
また、街場のワインショップでも、品揃えに工夫のあるところでは日本酒や梅酒を扱っていたりします。(チェーン店のニコラなどにはありません)一度、そんなワインショップの販売の方と話をしたら、日本酒の勉強会に参加したことがあると教えてくれました。勉強会、どういった組織がオーガナイズしているのでしょう。ジェトロじゃないだろうし・・・(ジェトロだったら万々歳ですが)興味があります。
また、獺祭はパリ支部がありますし、
盾の川も担当の方がパリにいらっしゃって、食イベントなどに積極的に出展し、プロモーションされています。一度、獺祭パリ支部の方に近い将来どこでも普通に日本酒が買えるようになるといいですね、と言ったところ「実はそれも良し悪しで、管理ができない店で売られるのは困る。もし状態が悪くなったものを売られてしまったら、お客様にはそれが獺祭だと思われてしまうから」との事で、確かにいい日本酒になればなるほどただ数が売れさえすればいいという問題じゃないんだ、特に発展途中の今の時点では、と思ったのでした。(注:人件費をかけてでも、自社製品を正しく伝えるために努力している酒蔵もあるということ)
そういえば・・・もう10年以上も前ですが、フランス人ワイン評論家の家に呼ばれた時、だいぶ前に開栓したであろう日本酒の瓶を戸棚から出されて「それはもうダメだよ・・・」と思ったことがあります。日本酒は、コニャックではありません・・・開栓後に3ヶ月も4ヶ月も戸棚に入れておいたら、別物になってしまいます。・・・ということも、知ってもらわねば。私はいつもフランスの友人に「日本酒は蒸留酒じゃなくて、ワインと同じだよ。アルコール度数もそうだし、栓を開けたら早く飲んだほうがいいのも同じ」と言っています。
変わって、飲める店、という店ではここ数年は日本レストランにいい日本酒がずらり揃っていて嬉しい!!先日行ったpecopeco (*こちら!)やizakaya issé
うどんのさぬき屋、お蕎麦の更(*こちら!)など。ユーリンさんのおっしゃる通り、やっぱり飲める店の存在は重要です。そこでどんどん消費されればどんどん広がる、活性化する。
ちなみに、15年前はホテル日航の鉄板焼きレストランですら美少年くらいしかなかった・・・
以上、ざっとですがパリの日本酒事情でした。「限られた知識人たちの高尚なお楽しみ」から、「広く一般に知られる存在へ」。
今年は、フランス初の日本酒コンクール蔵マスターも開催されます。フランス人ソムリエたちによるフランス人のための日本酒コンクール!!
パリの日本酒、盛り上げて行きたいです。美味しいですからね、何しろ!!
⭐︎ ジェトロによるフランスへの日本酒の輸出ガイドブックにヨーロッパの国別日本酒消費量等具体的な統計が出ています。参考になります。
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