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パリ在住21年ライター&コーディネーター角野恵子目線のパリ情報です。Keiko SUMINO-LEBLANC, journaliste japonaise, FOOD et Life Style.


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*写真中央・大林信彦監督、その右・常盤貴子さん。
インタビューを記録する意味で、このブログにアップします。




2019年2月17日
シネマテーク・フランンセーズにて
大林信彦監督作品『花筐』が上映されました。

昨年夏に始まった
『ジャポニスム2018』の一環で、
シネマテーク・フランセーズとパリ日本文化会館を会場に
『100 ans de cinéma japonais 〜日本映画の100年』と題された
日本映画の大回顧上映会が開催されています。







この機会に、
日仏の専門家が厳選した119の日本映画が
パリで公開されている、というわけです。

選考基準は、ズバリ

「フランス人がこれまで見たことのない日本映画を紹介する」!!




なんと、記念すべき初回上映は
無声映画『雄呂血』(おろち)でした。







無声映画なんて、生まれて初めて見ました。
モノクロで、音がない、サイレントムービー、= おとなしい・・・
と思ったら大間違い!
阪東妻三郎の圧倒的なアクションを
弁士・坂本頼光さんの小気味いい語りと
楽団ラガード・モノトーン・トリオの生演奏が
生き生きと盛り上げ、
オペラや演劇に親しんだ目の肥えたパリの観客を
完全に魅了していました。

仏人選考委員の言葉が
心に残っています。

「この時代以前にあった
日本映画のひっちゃかめっちゃかさが、
その後、日本映画から消えてしまった。
この映画は、ひっちゃかめっちゃかなエナジーに満ちた日本映画を
現代に伝える、現存する唯一のフィルムです」




フランス人は
回顧上映会などを企画する際に、
一人の作家(映画監督)に絞って掘り下げる見方を好むそう。

そこをあえて、
一人の作家(例えば、溝口、小津、黒澤・・・)に絞らず、
「まだフランス人が知らない監督の作品」、
または、
「フランス人によく知られた監督の、知られざる作品」
を広く選んだからこそ、
こんな思いがけない発見もあったわけです。

『日本映画の100年』
大きな意義のあるイベントだと思います。





そんな『日本映画の100年』
も、いよいよ来月で終わるわけですが、
華々しく最後を飾る作品上映の一つが
この『花筐』でした。


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なんと、上映後には
大林信彦監督と主演女優の常盤貴子さんを招いての
アフタートークが!
(写真1枚目)



大林信彦監督といえば、
私にとっては
『転校生』であり、『時をかける少女』です。

私たちの時代に、リアルタイムで、
話題作を撮り続ける監督、という印象。
その大林信彦監督が現在81歳になられ、
しかも長い闘病生活にあったなどとは、全く存じ上げませんでした。
大林信彦監督が81歳?!
信じられませんでした。



杖をついて、ステージに登る大林信彦監督。
つい手を伸ばし、助けたくなる、
そんな衝動にかられましたが、
ひとたび話を始めれば
聞く人をたじろがせる迫力、気迫。
頭脳明晰で、伝えたいことがはっきりしているんだ、と
誰もがわかる声であり、語調でした。



戦争を体験した
戦後の映画監督として、
60年間の映画人生の中で大林信彦監督が一貫して伝えてきたこと、
それは


「戦争は嫌だ! 戦争は嫌だ! 戦争は嫌だ!」


という、たった一つのメッセージなのだそうです。



『映画とは、平和を求める庶民の力。

映画に歴史を変えることはできないが、
歴史の未来を変えることはできるはず』



そんな、大林信彦監督の言葉を胸に、
懐かしの『転校生』をもう一度、
そして、まだ見ていない大林信彦作品を是非
見たいと思います。








戦争を体験した
戦後の映画監督としての自分を語るとき、
黒澤明監督、そして小津安二郎監督について
説明しないわけにはいかない、とも
大林信彦監督は明言していました。

その小津安二郎監督の言葉:

『どうでもいいことは流行に任せろ、

道徳は国家権力に任せろ(さもなきゃ犯罪者になってしまう)、

ただし芸術だけは自分に従う(芸術活動だけは、自分の価値を全うする)


そして、

『ならば、映画を作らない』


と、結論付けたのが小津安二郎だった、と。


自分の誠に従い、芸術を全うした時、
それは国家権力に背くものになる。
であれば、映画を作らない。


とはいえ、日本の「とうふ」だけは、なかなか世界に誇れるいいものだ。

じゃあ「とうふ」の映画を作ろう。

そうやって生まれた作品たちが
あまたの名作、小津安二郎映画だと・・・




そして大林信彦監督は付け加えました、

『そして、そのとうふの良さをわかってくれたのは、
日本人ではなく、
フランスの皆さんだったというわけですね』




小津安二郎監督は、
自身の人生で一番活躍できる時期に戦争時代を送ることになった
不運の人だったそうです。
これまで、そういう見方を
小津安二郎作品に対してしたことがありませんでした。

そして、とうふ・・・





戦争に翻弄された、小津安二郎監督、
黒澤明監督、
大林信彦監督。
表現の自由・・・
特定秘密保護法成立以降、私たちは
こんなに悠長に構えていて大丈夫なのか?



『私たちが先輩から受け継いだものを、
今の若い日本の監督がしっかり
繋いでくれていると感じます。

だから、安心して見守っています』


と、大林信彦監督は締めくくられました。


奇しくも、『花筐』に続く上映は
村上春樹原作『ハナレイ・ベイ』。
アメリカ人水兵、イラク戦争・・・などがディテールに差し込まれ、
『日本の若い世代は全く政治に関心がない。
この映画をきっかけに興味を持ってくれたら』
と、松永大司監督。




やっぱり・・・
表現者にとって、一番重要なことは
ただ一つ、なのかもしれません。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコも
言っていましたよね。







それにしても、
製作費用という大問題が付いて回る
映画製作を、
60年間一貫してインディペンデントに、
『家族経営で』行ってきた大林信彦監督。
神業に思えます。


大林信彦作品の1つ1つが、紛れもない
『自分の誠』の証だということです。


『映画を愛し、映画に誇りを持つ国民の皆さんに
こうしてお会いすることができ嬉しいです』


と、開口一番に仰っていた言葉は、
本当に飾らぬ
監督の本心だったと思います。
11時間の空の旅は、危険を覚悟しての決意だったと想像しますが、
そうしてでも、フランスのファンに会いたかったんだと。


自分の誠を貫いた大林信彦監督と、
インディペンデントな映画作品の価値を
正当に評価するフランスのファンたちが
(かのウッディ・アレン監督も
「フランスがあってよかった」と名言を残しているように)、

2月17日、シネマテーク・フランセーズの会場に同席した、
その場に居合すことができ、幸せでした。
映画を愛する監督とファンの
相思相愛の特別な空気感が、会場を満たしていました。





『映画とは、平和を求める庶民の力。

映画に歴史を変えることはできないが、
歴史の未来を変えることはできるはず』


大林信彦監督






















*****

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# by keikosuminoleb | 2019-02-19 03:30 | イベント & お披露目 | Comments(0)