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パリ在住21年ライター&コーディネーター角野恵子目線のパリ情報です。Keiko SUMINO-LEBLANC, journaliste japonaise, FOOD et Life Style.


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若い頃の私は、
ちょくちょくストをするフランス人のことを

「バカだな〜」と思って見ていました。




デモに関しても同じようなものでした。

「得にならないのに、よくやるね」
「無駄な努力と思わないのかな?」





ところが
フランスに21年住んだ今は違います。





今回の「黄色いベスト」の動きに関しても


「フランス人は
こうしてちゃんと革命を起こすからすごい」





率直に感心します。



ものごと、
言わなきゃ(発言しなきゃ)他人にはわかりません。
伝えたい相手が国家権力だったりする場合は
伝える努力も相当なものです。
でもその労を払ってでも、こうやって伝える。
動く。





上の写真は、昨日12月8日の新聞です。

12月1日(土)の大暴動から1週間
パリに隣接する県の「黄色いベスト」たちに密着した取材。



12月9日(日)発売の別の新聞には
12月8日(土)の「黄色いベスト」ムーブメントに参加した人々の声や
その日のパリの住人の感想なども掲載されていました。
「人々にとっての実際のところ」がよくわかる取材、
(政府の言い分や、派手な最前線の写真などだけでなく)
読んでいておもしろかったです。




「黄色いベスト」とは?

日本でも頻繁に報道されているようですが、是非
以下の高崎順子さんの記事をお読みください。





さすが順子さん、公平な記事で、
しかも綿密な事実関係の裏付けがあり
とても共感できます。





カフェの新聞で得た「黄色いベスト」の情報も
とても共感できるものでした。

30代のカップル、
18ヶ月の一人娘がいます。
奥さんは公務員で、10人ほどの部下を持つ責任ある仕事をし、
給料は月1500ユーロ。

パートナー(入籍はされていないようでした)である旦那さんは庭師で、
ボーナス含め月1900ユーロ。

二人とも、
「毎月の月給を
マイナス500ユーロからスタートしています」と。

月々のやりくりが難しく、
そうならざるをえない状況、ほんとうによくわかります。




「私たちは何の文句も言わず、
ずっと毎日働いてきました。

毎日出勤して、
週末は安く買ったこの家を修理する生活です。

毎月、家のローン900ユーロを払って、
保険を払って。

家計の大きな負担だった電気代を軽減するために、
親戚から薪ストーブを安く譲ってもらいました。
燃料の薪は、彼が持ってくる木で賄っています。

洋服はチャリティーでもらってきます。
自分たちの楽しみのために
お金を使うことなんてありません。

唯一、娘には時々、新しい洋服を買ってあげています。

自分たちの健康は二の次で、
私は歯を、彼は目を治療しなければならないのですが
ずっとそのままです。

バカンスは、両親の家で過ごします。


今週の土曜日(つまり12月8日)は、
黄色いベストの集まりに参加します」



お金を稼ぐ、というのは、
ほんとうに大変なこと。
涙が出てきました。


郊外に住み、パートナーは庭師という彼女の家には
当然車があり、それも3台。
うち1台は、パートナー氏の仕事に必要なワゴン。
毎月毎月、本当にギリギリなところに
ガソリン代の値上げ、
ディーゼル車の販売禁止。

パリは東京より物価高な上、
フランスは日本に比べてはるかに重税の国です。


まだ追い打ちをかけるの?
もうやってられないよ。
もうたくさん。

そう思うのが普通です。
だって彼らはフランス国家の一市民、
人権のある人間ですから。



そして問題の土曜日、
ムーブメントに参加者した人の声は、




「私は定年退職して、月々1800ユーロの年金をもらっています。
自分には何の問題もなありません。
今日は、若者たちのためにここに来ました」

という退職者もいれば、




「息子が参加するというのでついてきました。
一人で放っておくわけにはいきませんからね・笑」


という現在アクティブな父親も。





5年前のシャルリー・エブド襲撃事件を思い出しました。
あの時も、

「シャルリーのユーモアには共感できないけれど、
表現の自由は守られるべきだから」

と、追悼集会に参加したシックな女性がいました。









「私たちには、この蛍光黄色のベストが必要なんです、

自分たちの存在に気づいてもらうために。」


高速道路で車がエンストした時、
夜間に自転車に乗る時、
安全のために着る黄色いベスト。

「ここにいますよ! ぶつからないよう注意して!」

そういうしるしのこのベストを
彼らは着なければならないわけです。
お金を稼ぐこと、
そして生きてゆくということは、本当に大変なこと。
国を動かしているあなたたちは、それをわかっていますか?
全く、そう思います。
(マクロン大統領にとっては、500ユーロなんて
多分お茶代くらいのものでしょう)


先ほどの女性、責任あるポストで仕事をし
月々1500ユーロ・・・この物価高のフランスで、です。





「有識者たちは環境問題を訴えて

世界の終わりを力説しますが、

私たちは月々の終わりをどうするか、そこに必死なんです」


ラジオで聞いた声です。

環境のためのガソリンの増税、
それに不満を訴える黄色いベストの面々、

というシンプルな構図から、
黄色いベスト = 環境を考えないやつら

というこれまたシンプルな公式が生まれそうにもなりましたが、
そんなことはなく、

12月8日、フランス各地に現れた
黄色いベストの集団は、
同日各地で開催されていた環境問題のデモ行進に
合流したりしたそうです。

フランス人は面白いです。





そういえば、先日こんな風に言う人に
会いましたよ。
彼は元社長で、今は無職。(自分の会社を売ったそう)

「黄色いベストはいい人たちだ。
彼らの目的は暴力じゃない。

政府は自ら赤字路線を廃止しておいて
交通手段のなくなった国民に
さらに負担をかけようとしている。

国鉄は利益のためにあるんじゃない、
国民の日々の暮らしのためにあるものだ。
利潤追求の企業じゃない。


フランス人は
働くためだけに生きているわけじゃないのだから、

今の政府のやり方に異議を唱えて当然だ!」




贅沢なパリ情報をちょくちょくアップしている私が
こんなことを言っていると
違和感があるかもしれません。
でも、
黄色いベストの面々の言い分はどれも筋が通っていて、
憤りにも共感します。
私も黄色いベストの一人です。


公平な報道がなされているおかげで、
また発言の自由が保障されているおかげで、
これらのことを普通に知ることができます。







かたや、
偏った報道がお好きな国もあるようです。

または、
国民がおとなしく沈黙している国。
労働者の権利である
ストライキすらない国。


何が起きても、日常は変わらず平穏に過ぎてゆく。
しかしそれは表面的なことで、
SNSの蓋を開ければ、不満や鬱憤のるつぼ。
一見おとなしく見えた国民たちは、
SNSの中で手頃な標的を血祭りにあげ、
相手が自殺するまでとことん叩き潰す。

そんなことをしても、じぶんの得にならいのはもちろんのこと
社会に一石を投じることもありえない。
全く何にもならないし、その上不健康です。
社会全体が不健康になります。





12月9日の夕方
パリの空には大きな虹がかかりました。


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ギリシャ神話では、虹は
神々の国と地上を結ぶ
メッセンジャーの架け橋なのだそうです。

黄色いベストを着た人たちのメッセージが
届くべきとろへ届く
よき知らせのように見えました。



しかしながら大きな問題は
黄色いベスト集団に代表者が存在せず、
政府が対話に応じたくとも
黄色いベスト側にそれを担当する人がいないのだそうです。

民主主義は時間がかかるし、
こんな風に双方手探りにならざるをえない場面もあるのですね。
効率が悪いのが民主主義なんだなあと。

そして、
たとえ効率が良くとも独裁政治は絶対NO!
が、フランスなんですね。





【追記】
私が暮らすパリ13区の大通りのマンションに、
先週土曜日から黄色いベストを窓辺に飾っているところがあります。
バルコニーの、2つある窓に1枚ずつ。

12月8日の朝、パンを買いに出かけたら、
商店街の人混みにフランス国旗が見えました。
よく見ると立派な電動車椅子に乗った男性が
車椅子に旗を立てていたのです。
その車椅子の背には、黄色いベストが着せてありました。

ちょうど今聴いているラジオで、
フランスはヨーロッパ1重税の国だと
デンマークを抜いているそうです









【追記②】

このブログをアップした2時間後、
マクロン大統領の演説がテレビ中継されました。
よかった、ひとまずメッセージは届きました。
以下、マクロン大統領のツイッターより。













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# by keikosuminoleb | 2018-12-11 00:38 | 旅のお役立ち情報・治安 | Comments(0)